EMA MIYATA

わたしの頭の中はずっと加算混合といった具合、記憶が重なれば重なるほどに内容は白へと近づいてゆくので、見て触れて確かめたものも、他人(ひと)と交わした言葉も、自ら決定したテーマですら、よそ見をしたらもう境界線など埋もれて消えている。
明日も思いたいことは文字へ、たいせつな約束は手帳へ、嬉しかったことは相手へ、その瞬間「重なり防止運動」を行わなくてはならない。正直なところ、常に間に合っていない。留めようと信じたものが、道端にタンポポを見つければ飛んでゆく。このままじゃあイヤだあ、頭がわるい、かれこれ10年、もがきっぱなし。
数か月にいっぺん会いたくなるあの子は、フォークでパスタをつつきながら「今度はなにが起きたの?」とよく笑う。数か月前のわたしが一大事!と叫んでいたことを教えてくれて、それを覚えていないわたしを見てクスクス笑う。それからまた「ちがうちがう!きいてよ今度こそ一大事!」と聞いてケラケラ笑う。

白い服を着て、知らないひとに色をつけてもらった。不思議だった。楽しかった。けどやっぱり不思議だった。お兄さんが打った色の上から、おばさんが色を打ったら、うまく混ざって別な色になった。胸元もおなかも足先も、あっという間に白じゃなくなった。「こんなことってあるのね」みたいな、企画チームにいたでしょうアナタと叱られそうだけど、そんな気持ちになった。妙にこっぱずかしくて、うわあ!わたし染まる!と思って、照れくさくて、びゅーんと川を飛び越えて、にげだしたくなった。
色水は冷たかったし、染められてる!って感じが確かにあった。重なって重なって重なってゆく感じがちゃんとあった。その重なりが分かる感じが、怖かった、けれど次第に「向き合うんや!いま!いま生きてる!」みたいな(これまた企画チームだよねアナタと言われそう)気持ちが、勝ってくるようになった。
その様子をカメラマンさんたちが撮影してくれていた。わたしの愚かな(物騒な言い方になるけれど)頭の中の白さが、ここでついに露わになってしまった。んもう、染まる染まる!どんどん染まる!楽しくって同時に怖くって、開拓じゃ〜〜〜〜!!!!!という感じがした。いま!いま生きてる!
水鉄砲を手にニコニコケラケラと笑ってくれたいろんな方のことを、すごくすごくありがたいなあと思った。ありがとうございました。
この体験はわたしに必要なものであったと思うし、なんだろう、頭の中に色が足された気がした。一大事だ!

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